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式庖丁

平安時代より続く歴史ある食の儀式。
いのちに向き合う根源的な姿が立ち現れる。

式庖丁は、平安時代から宮中で節会等のおめでたい日に行われてきた、食の儀式でございます。
大きな俎板に乗せた魚や鳥を、直接手を触れず、庖丁刀と俎箸で切り分け、瑞祥というめでたい形を表すものです。

平安中期、すなわち藤原道長の時代に宮家より伝わりまして、現在で1100年ほどになります。
式庖丁は藤原一族によって完成され、当時の貴族・公家に伝わり、生間流は後陽成天皇の弟君、八条の宮家に仕え、その後京極の宮家、有栖川宮家と経過いたしまして、現在三十代目家元であります。
烏帽子、袴、狩衣姿で、まな板の上の魚や鳥に直接手を触れずに包丁刀を使って行い、めでたい形に切り分ける技で、その流儀のひとつが生間(いかま)流式庖丁でございます。

古くから式庖丁は主に節会に行われてきた儀式です。節会と申しますのは中国より伝わります祝日で、代表的なものが人日の節会、上巳の節会、端午の節会、七夕の節会、重陽の節会でございます。
その中でも重陽の節会は旧暦で申しますと十月以降にあたり、菊の花が咲き誇る時期に不老長寿を祝うたいへん華やかな節会でございます。

即ち式庖丁は、節会の折々に魚の切り方でもって瑞祥表現(おめでたい形)するもので、食するものではございません。
めでて、何かをおくみ取りいただき、次の宴に移っていきます。